ラグビーワールドカップ2015年の衝撃
ラグビーワールドカップ2015イングランド大会で、日本代表(ジャパン)は世界に大きな衝撃を与えました。
プールステージの初戦、対南アフリカ戦で小さな蟻が大きな象を倒す大番狂わせを起こしました。離されても離されても追いついていくひたむきなジャパン。
これほどミスがないジャパンは初めて見ました。
特にフォワードの選手の体を張ったプレーには見ていて涙が出る思いでした。
そしてついにその時が訪れました。
終了間際相手の反則で得たチャンスで、ペナルティー・ゴール(PG)を狙えば同点で引き分けに持ち込むことができました。
世界ランキング3位の南アフリカ相手だけに引き分けでも充分と考える人もいたでしょう。
しかし選手たちは引き分けは狙わず、トライを取って勝つことを狙います。
残り時間がなかったので、タッチに出してのラインアウトでなくスクラムを選択。この選択を会場の観衆は大声援で称えます。
スクラムで優勢に立っていたジャパンですが、南アフリカも世界ランキング3位の意地で押し返します。
崩れたスクラムから巧くボールをキープした後、スクラムハーフの日和佐篤は右サイドに展開。キャプテンのリーチ マイケルが右隅に飛び込むかに思えましたが、ゴールライン手前で南アフリカの屈強なディフェンスに阻まれました。
今度は日和佐が左サイドに展開。
フルバック五郎丸歩がおとりになってディフェンスを引き付けた結果、外のディフェンスが薄くなっていきます。ボールはセンターの立川理道に渡り、立川は二人飛ばして突破力のあるNo.8アマナキ・レレイ・マフィーに。マフィーは一人かわすと大外で待っていたウイング(WTB)のカーン・ヘスケスにパスし、ヘスケスは相手ディフェンスにタックルされながらも左隅に飛び込んでトライ!
34-32で南アフリカに勝つジャイアント・キリングをやってのけました。
この勝利に世界のラグビー関係者、ラグビーファンは震撼し、ハリー・ポッターの著者に「こんな話は書けない」とまで言わしめました。
プールステージで3勝1敗と好成績を上げたものの、勝ち点差でプール3位となり惜しくも決勝トーナメント進出を逃しました。
プールステージ3勝1敗で決勝トーナメントに進めなかったのは史上初のことでした。
ラグビー日本代表の着実さが芽生えた2016年
衝撃の2015年の後、2016年はこれまで以上にジャパンが注目されました。
ワールドカップで苦杯をなめたスコットランドがフルメンバーで春に来日し2試合、秋には進境著しいアルゼンチンが来日した後、ヨーロッパ遠征でジョージア、ウェールズ、フィジーと対戦。これまでにない充実したスケジュールでした。
雪辱を期したスコットランド戦でしたが、相手もさすがシックス・ネーションズの猛者。
反則を誘ってPGで着実に得点を積み重ねるしたたかな戦い方で2試合とも勝たせてはくれませんでした。
しかし充分にタフな戦いを相手に強いて、これまでのジャパンとは違うことを見せてくれました。
秋初戦となったアルゼンチン戦は、始動間もないジャパンに対して、ニュージランド、オーストラリア、南アフリカとのザ・ラグビー・チャンピオンシップを戦ったばかりで、チームとしての完成度が違いました。
案の定、20-54と完敗してしまいます。しかし、敗因がはっきりしているので、今後チーム状態が上がっていくことを考えれば、それほど不安な敗戦ではありませんでした。
ジョージアは力勝負で挑んでくるチーム。
バワフルなプレーに少々手こずりましたが、慌てることなく勝利。
そして誰しも今回のヨーロッパ遠征のメインと捉える敵地カーディフでのウェールズ戦を向かえました。
ラグビーの聖地アームズパークのプリンシパリティー・スタジアムは、7万の観衆で埋まりました。
試合前の国歌斉唱で、まず君が代が斉唱されました。
プリンシパリティー・スタジアムに神々しく響く君が代、感無量です。そしてウェールズ国歌ランド・オブ・マイ・ファーザーズ。
私的には世界二大しみじみ系国歌の競演です。
さて試合はジャパンがPGで先制すると、ウェールズにシンビン、10分間退出者が出ます。
ここでペースを掴みたかったジャパンですが、もう1本PG決めるにとどまってしまいます。
そして一人少ないウェールズにトライを許し、退出者が戻ってまたトライを許してしまいます。
しかし、ここでズルズルいかないのが今のジャパン。
切り札のWTB山田章仁がトライを取って、ゴールも決まり前半を13-14と1点差で折り返します。
後半立ち上がりはウェールズペースで、1トライ1ゴール1PGを決められ、13-24まで離されてしまいます。
しかし、またしてもズルズルいかないジャパンは、WTB福岡のトライ、スタンドオフ田村のゴールで20-24と再び勝負の土俵中央に押し戻します。
この後PGを決め合って23-30。そしてついにジャパンが追いつきます。
山田に代わって入ったばかりのアマナキ・ロトアヘアがトライ!
田村がゴールを決めて30-30の同点!残り時間は6分、南アフリカ戦の再来なるか。
しかし、百戦錬磨のウェールズは持ち味の固いディフェンスをここで発揮します。
そしてじわじわ前に進み、残り時間1分でドロップ・ゴールを決め、試合にけりを付けました。
30-33の惜敗、1983年に同じ地で24-29と健闘した試合を、点差的には上回る試合となりました。
こういう展開になって勝ち切ることが今後のジャパンの課題です。
ヨーロッパ遠征最後の試合、対フィジー戦はウェールズ戦で力を使い果たした感があり、25-38と敗戦。
だいぶ疲労が溜まっている中で、走力もパワーもあるフィジー相手は、かなりきついものがありました。
2015年があまりにも印象的だったので、2016年のジャパンは少し物足りなく感じますが、長い目で見た場合、充分に内容の濃い1年で、着実さが芽生えてきました。
ラグビー日本代表の大きな飛躍を期待したい2017年
2017年もジャパンはビッグカードを組むことができました。
6月に現在世界ランキング16位のルーマニアと世界ランキング4位のアイルランドが来日します。
日本は世界ランキング11位です。
アイルランドとは2試合行いますが、主力はブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズに参加することが予想されるため、少なくとも1勝、できれば2勝したいところです。
11月にはまず世界ランキング3位のオーストラリアが来日します。続いて敵地に乗り込んで世界ランキング7位のフランスと対戦します。
この両チームにどのような戦いができるのか、2019年に日本で開催されるワールドカップで決勝トーナメント進出を目指すジャパンにとって、そのレベルまで到達するための試金石となりそうです。
ここで2試合とも完敗するようでは、2015年より前の状況に逆戻り。
1試合でも勝つようなことがあれば、順調に強化が進んでいることの証しとなります。
全てのポジションまではまだ波及していませんが、かなりの数のポジションはポジション争いが激化しています。
だいぶ層が厚くなってきました。
4月、5月には、アジア・ラグビー・チャンピオンシップで香港、韓国と2試合ずつ対戦しますが、例年通り若手中心のメンバーで臨むことになりそうです。
このチームから6月、11月に行われる試合に抜擢される若手が何名か出てきてくれると非常に楽しみです。
2017年がジャパンにとって大きく飛躍する年になるのか、注目しています。
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