
1.生産技術という仕事について
大卒で社会人になり転職を1回経験していますが、生産技術の仕事を30年経験していることになります。
生産技術という仕事は範囲が広く、ほとんどの人がどんな仕事なのか知らないのではと思っています。
家族にも説明したことがありますが理解できないようなので最近はあまり仕事の話はしないようにしています。
一般的には設計と製造部門の間に位置しているので何でも屋のところがあり、生産技術で必要とされる資格もないので誰でもできる仕事ともいえます。
現実問題として理工系出身の新人は研究、開発、設計部門を希望してくる人が大半です。
生産技術部門にくる新人は第一志望ではなくやむなく配属されてくる人が多いことは最初の挨拶でなんとなくわかります。
私も最初は開発部門に配属されましたが、直ぐに生産技術部門に異動したので都落ちした気分になったことは確かです。
スポンサードリンクそれでも現在は生産技術の仕事をしてきてよかったと思っています。
2.生産技術の初期段階の仕事とは?
最初に生産技術部に異動したときは工場内に納品してくる荷姿といわれる段ボールを倉庫内に自動で搬送する設備の導入でした。
職場の人が10名でタスクと呼ばれるグループで行う仕事でした。
事業規模も数千万円かかり外部メーカーとの折衝もあり納期も厳しく大変な仕事になりました。
担当したのは段ボールに記載されているバーコードを読み取り決められたコンベアに振り分ける設備の制御でした。
最初の頃は読み取りミスが多く違いコンベアに段ボールに移動してしまうため、元に戻す作業を一日現場に張り付いて見ていたことがありました。
昼休みも稼働しているので朝購入したおにぎりを食べながら監視したこともあります。
この仕事を通じて生産設備を導入して稼働するまでの仕事の流れを身に付けることができました。
3.生産技術の中堅段階でC言語を習得
このころは自動化技術が全盛期になつて来たので職場でもメーカーから設備を購入するだけではなく自前の設備を開発することになりました。
ロボットと言うと人型ロボットをイメージする人が多いと思いますが、生産技術で使用されるのはスカラー型といわれる人の片腕の動きを再現したロボットと、直交ロボットという3軸をスライドさせた動きを組み合わせたロボットに大きく分けられます。
スカラー型ロボットは専門メーカーでないと開発が難しいので、直交ロボットが開発されることになりました。
メカ屋さん、制御屋さん、電気屋さんが主に中心となって開発がすすめられましたが、部品を掴んだ時の位置のずれを補正するセンシング部分が担当となりました。
計測技術の知見はあまりなかったのですが外部の講習会に参加したり世の中の技術動向を調べたり特許を検索したりしながら勉強して少しずつ学んでいきました。
制御する部分も担当になったので当時の制御言語であるC言語というプログラムも独学でマスターしてデバッグといわれる間違っている箇所を見つける手法もみにつけることができました。
開発から実際に工場に導入されるまで3年ほどかかりましたが、素早い動きで組立するロボットを眺めていると苦労が吹き飛ぶ気持ちになれました。
4.生産技術の成熟期はさらに重要な仕事が増えていく
国内生産の空洞化と言われる時代になってきましたが、自社でも海外に生産拠点が移転し国内での生産が減少してきています。その影響で自動化設備も必要となくなってきており、
組立用の自動化設備開発は中止となり解散することになりました。
現在は海外生産への技術支援と開発部門に対する組立性の改善が中心になってきています。
具体的には製品が完成する前には何度も試作といわれる段階で未完成の製品がつくられます。この段階で量産といわれる大量生産したときに問題が発生しないように点検することが大事です。
設計部門でも点検しますが、生産技術部門でも3DCADと言われるデジタルの図面段階で組立に支障がないか点検しますが、この作業の重要性が高くなってきています。
実際に実物を作ってから修正するのはお金と時間がかかるからです。
生産部門とデジタルで組立するラインを構築しておいて、デジタルの製品を仮想で組立して点検するようになってきています。
実物があれば実際に手で触って部品を組み立てながら不具合を見つけやすいのですが、パソコンの画面だけの情報で同じように再現することはかなり難しく誰でもできるわけではありません。
スマホ世代の人は画面操作になれていますが、経験が浅いので見落とすことが多くなります。
逆にベテランの人は経験は豊富ですが3DCADの操作に慣れていないので時間がかかります。
両者がペアになればよいにですが世代間のコミュニケーションをとることが難しい時代なのでうまくいっているわけではないです。
生産技術の仕事は幅広くいつの時代でも勉強してきてなんとか乗り切ってきた感触があります。
若い人は油まみれの仕事だと思っている人も多いことは事実ですが、それだけではなくやり方次第では自分の工夫でいくらでも面白くすることができる仕事なので興味がある人は仕事として選んでも後悔しないとおもっています。